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COLUMN

相続公開7分で読める代表社員税理士 榎嶋 隆司

障害者控除で相続税ゼロを実現した堺市の事例|定期金・生命保険契約に関する権利の評価と保佐人制度の活用

堺市の相続税申告事例。相続人がお1人で、保佐審判を受けられている障害者の方の案件です。被相続人が契約者となっていた個人年金保険(定期金に関する権利)と、被相続人が契約者で被保険者を相続人とする生命保険契約(生命保険契約に関する権利)の評価を行い、相続税法第19条の4に基づく障害者控除を適用して相続税0円とした実例を、大阪・堺の税理士法人が実務目線で解説します。

結論

堺市内の相続税申告事例。相続人が1人で、保佐審判を受けられている障害者の方の案件です。被相続人が契約者であった個人年金保険(定期金に関する権利)と、被保険者が相続人である生命保険契約(生命保険契約に関する権利)の評価を行い、相続税法第19条の4に基づく障害者控除を適用することで最終的に相続税を0円とすることができました。引ききれない控除額は扶養義務者の相続税からも控除可能で、適用ミスがあると本来不要な納税が発生するため、論点の整理が極めて重要です。

【事例概要】堺市・相続人1人・保佐審判を受けた障害者の方

堺市内にお住まいの被相続人様の相続税申告事例です。

ご家族構成と特殊事情は次のとおりでした。

・場所: 堺市内
・相続人: お1人
・特殊事情: その相続人の方が保佐審判を受けられている障害者であること

被相続人様は生前、ご自身を契約者とする個人年金保険、および相続人の方を被保険者とする生命保険契約をご加入されていました。これらは「定期金に関する権利」「生命保険契約に関する権利」として相続税の課税対象となります。

加えて、唯一の相続人の方が保佐審判を受けられている障害者であったため、相続税法第19条の4に基づく障害者控除の適用が論点となりました。本記事では、この3つの論点(定期金に関する権利の評価/生命保険契約に関する権利の評価/障害者控除)について、本事例を素材として実務目線で解説します。

1. 定期金に関する権利の評価とは

定期金に関する権利の評価とは、主に「個人年金保険」や「企業年金」など、将来あるいは現在、年金(定期金)形式で分割してお金を受け取るタイプの契約を引き継いだ場合の評価論点です(相続税法第24条)。

対象となる主な契約は次のようなものです。

・個人年金保険(年金支払開始前のもの)
・損害保険の年金特約
・確定給付企業年金等

評価の方法は、原則として相続開始時点の「解約返戻金の金額」で評価します。解約返戻金がない契約(一部の掛け捨て型など)の場合は、払込済みの掛金に予定利率を考慮した一歩進んだ計算(複利年金終価率などを用いた計算)を行います。

本事例では、被相続人様が契約者となっていた個人年金保険が該当しました。年金支払開始前であったため、保険会社から「相続開始日時点の解約返戻金額証明書」を取り寄せ、その金額で評価しています。

2. 生命保険契約に関する権利の評価とは

生命保険契約に関する権利の評価とは、主に対象者(被保険者)が亡くなったときに一括で支払われる「終身保険」や「定期保険」、「養老保険」など、一般的な生命保険契約を引き継いだ場合の評価論点です(相続税法第3条第1項第3号、評価は施行令準用)。

対象となる主な契約は次のようなものです。

・終身保険
・定期保険(いわゆる掛け捨ての死亡保険)
・養老保険(満期に一括で満期保険金が出るもの)

評価の方法は、相続開始時点においてその契約をもし解約したとしたら保険会社から戻ってくる「解約返戻金の金額」そのもので評価します。計算方法は保険会社からの資料を基にします。

ポイントは「被相続人=契約者」かつ「被保険者=相続人(あるいは別の生存者)」というパターンです。被保険者がまだ生存しているため死亡保険金は支払われませんが、被相続人が保険料を負担して契約を維持してきた以上、その契約上の地位(契約者としての権利)は相続財産になります。

本事例では、被相続人様が契約者で被保険者が相続人の方である生命保険契約が該当しました。保険会社から相続開始日時点の解約返戻金額の証明書を取り寄せ、その金額で評価しています。なお、契約は被相続人様の死亡後も解約せず、相続人の方が契約者の地位を承継することができます。

3. 障害者控除 — 保佐人・後見人が必要な相続人への適用

障害者控除は、相続人が障害者である場合に、その相続人の相続税額から一定額を控除できる制度です(相続税法第19条の4)。

控除額の計算は、相続人が満85歳に達するまでの年数(1年未満切上げ)に応じて算定します。

・一般障害者: 85歳までの年数 × 10万円
・特別障害者: 85歳までの年数 × 20万円

家庭裁判所による後見・保佐審判との関係は次のとおりです。

・成年被後見人(後見開始の審判を受けた方): 相続税法上、特別障害者として取扱われます(相続税法基本通達19の4-3)
・被保佐人(保佐開始の審判を受けた方): 障害の程度や身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の等級等に応じて、一般障害者または特別障害者として認定されます

本事例の相続人の方は保佐審判を受けられていたため、要件を整理したうえで障害者控除を適用しました。

そして実務上もう一つ重要なのが、引ききれない控除額の取扱いです。障害者控除の額が当該相続人ご本人の相続税額を超える場合、その超える部分は扶養義務者(配偶者・直系血族・兄弟姉妹・家庭裁判所が定めた三親等内の親族)の相続税額からも控除することができます(相続税法第19条の4第3項)。

つまり、相続人がお1人で控除を全部使いきれない場合でも、他に共同で相続する扶養義務者があれば、その方の相続税からも控除できる、ということです。

4. 本件の結果 — 障害者控除の適用で相続税0円

本事例では、次のステップで申告書を作成しました。

1. 定期金に関する権利(個人年金保険)の評価額を、保険会社の解約返戻金額証明書に基づいて算定
2. 生命保険契約に関する権利(被保険者:相続人)の評価額を、解約返戻金額証明書に基づいて算定
3. その他の相続財産・債務を一次資料で確認
4. 相続税の総額を計算
5. 相続人の方が保佐審判を受けられていることを根拠に、相続税法第19条の4に基づく障害者控除を適用

結果として、相続税の課税価格に対して算出された税額を障害者控除で全額相殺することができ、最終的な納付すべき相続税は0円となりました。

仮に障害者控除の適用を見落としていれば、本来納める必要のない相続税を納付することとなっていたケースです。論点の整理と適用判断が、納税額に直結することを改めて実感した事例です。

5. まとめ — 適用ミスを防ぐためのポイント

本記事のポイントを整理します。

・被相続人が契約者となっていた個人年金保険等は「定期金に関する権利」として相続税の課税対象。原則は解約返戻金額で評価
・被相続人が契約者で被保険者が相続人(あるいは生存者)の生命保険契約は「生命保険契約に関する権利」として相続税の課税対象。解約返戻金額で評価
・保佐審判・後見審判を受けられている相続人がいる場合は、相続税法第19条の4の障害者控除の適用を必ず検討する
・障害者控除を相続人本人で引ききれない場合は、扶養義務者の相続税からも控除可能

相続税の申告では、財産の評価だけでなく、控除制度の適用判断ひとつで税額が大きく変わります。特に障害者控除のように適用ミスをすると本来不要な納税が発生する制度については、相続人の状況を丁寧に伺ったうえで判断する必要があります。

当事務所では堺・大阪エリアを中心に相続税申告に対応しており、保佐・後見が絡む案件、生命保険・年金契約の権利評価が論点となる案件も豊富な経験で対応しております。判断に迷われたら、早めにご相談ください。

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