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COLUMN

不動産公開8分で読める代表社員税理士 榎嶋 隆司

住宅ローン残高を下回る価格でマイホーム売却|「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算」で給与所得から控除した堺市西区の実例

住宅ローン2,000万円が残るマイホームを1,200万円で同族会社に売却し、譲渡損失が発生した堺市西区のケース。同族会社売却時の家屋評価(流通価格と固定資産税評価額の按分)の実務から、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41条の5)の適用、給与所得との損益通算まで現役税理士が実務目線で解説します。

結論

住宅ローン残高を下回る価格でマイホームを売却し譲渡損失が出た場合、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(措置法41条の5)により給与所得等から損失を控除でき、残額は売却年の翌年以後最大3年繰越可能(合計所得3,000万円超の年は繰越不可)。同族会社への売却ではお手盛り防止のため、家屋評価は固定資産税評価額をそのまま使えず、不動産会社の評価明細書をもとに土地家屋を按分して時価を算出する実務が必須です。

【事例】堺市西区・40代ご夫婦のマイホーム買換えケース

40代のご夫婦が、自宅の買換えのため、住宅ローン2,000万円が残るマイホームを売却することになりました。

事情により、売却先はご自身が経営する不動産管理会社(同族会社)。売却金額は1,200万円で、ローン残高を大きく下回るオーバーローン状態でした。

このとき実務上、次の3つの課題が浮上しました。

① 同族会社への売却金額をどう設定するか(お手盛り防止)
② 土地は個人所有のまま、建物のみを売却する事案で家屋の時価をどう評価するか
③ 売却額がローン残高を下回り、譲渡損失が発生する場合の税務上の救済措置

本記事ではこの3点を、堺市西区の税理士法人として実務目線で整理します。

同族会社への売却で必須の「お手盛り防止」評価実務

第三者間での通常の売買では、当事者間で合意した売買金額がそのまま税務上の譲渡対価として扱われます。

しかし、個人と同族会社(経営者本人や親族が支配する法人)との間の売買では、恣意的に低額または高額に設定する「お手盛り計算」が疑われやすく、税務上は「適正な時価」での取引と整合する金額にしておく必要があります。

時価を逸脱した売買金額には、所得税法第59条のみなし譲渡規定や、法人税側での受贈益課税など、複数の論点が連鎖して発生します。

そのため、同族会社への不動産売却を行う際は、売買金額の根拠資料を客観的に整えておくことが実務上の必須要件となります。

家屋評価|固定資産税評価額を「そのまま使えない」理由

家屋の時価評価で真っ先に候補となるのが「固定資産税評価額」です。

ただし、固定資産税評価額は市町村が固定資産税課税のために設定した評価額であり、所得税法上の「適正な時価」を直接示すものではありません。

固定資産税評価額は再建築価格を基礎に経年減点補正を加えた行政計算で、市場の流通価格とは乖離があるのが通常です。所得税法的にこれをそのまま売買金額として採用することは適切でなく、税務署からの否認リスクも残ります。

そのため、同族会社との不動産取引における家屋評価では、別途「市場流通価格に基づく評価」が求められます。

流通価格+按分で時価を算出する実務手順

本ケースでは、ちょうど買換え予定の不動産会社にお願いし、対象不動産(土地+家屋一体)の評価明細書を作成いただきました。

そのうえで、土地と家屋の固定資産税評価額の比率を用いて、評価明細書の総額から家屋部分の時価を按分算出。これを売買金額の根拠として整理しました。

実務手順をまとめると次のとおりです。

① 不動産会社に「評価明細書」または「査定書」を依頼(土地+家屋一体での流通想定価格)
② 直近年度の「固定資産税評価証明書」を取得(土地・家屋それぞれ)
③ 固定資産税評価額の比率で、流通価格を土地・家屋に按分
④ 算出された家屋分の時価を、同族会社との売買金額として採用
⑤ 評価明細書・固定資産税評価証明書・按分計算書を保管(税務調査対応資料)

この一連の根拠資料を整えることで、お手盛り計算の懸念を払拭しつつ、土地は個人所有のまま家屋のみを売却するスキームが税務上も成立します。

「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」とは

本ケースでは、家屋の時価で売却した結果、譲渡損失が発生しました。

このように住宅ローンが残るマイホームをローン残高未満の代金で売却し、譲渡損失が発生した場合に適用できるのが、租税特別措置法第41条の5「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」です。

この特例の特徴は次のとおりです。

① **新たなマイホームを購入しない場合でも適用可能**(同条文系列の「マイホーム買換時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」(措置法41条の5の2)とは別建ての制度)
② 給与所得・事業所得など他の所得との損益通算が可能
③ 損益通算しきれない残額は、売却年の翌年以後最大3年繰越控除可能
④ 買換資産を取得した場合は住宅ローン控除との併用も可能

買換え時に資金繰りが逼迫しがちなタイミングで、所得税・住民税の負担軽減を実現できる強力な救済措置です。

適用要件と「合計所得3,000万円」の上限

主な適用要件は次のとおりです。

① 自分が住んでいるマイホーム(居住用財産)の譲渡であること(住まなくなった場合は3年経過する日の属する年の12月31日までに売却)
② 譲渡契約日の前日において、譲渡資産にかかる住宅ローン(償還期間10年以上)の残高があること
③ 売却金額が住宅ローン残高を下回っていること(オーバーローン)
④ 譲渡先が配偶者・直系血族・生計を一にする親族・同族会社等の特殊関係者でないこと(※同族会社売却は原則不可。本ケースのような事案は別の救済枠組みでの検討が必要)
⑤ 売却した年の前年・前々年に同種の特例を受けていないこと
⑥ **合計所得金額が3,000万円を超える年は繰越控除を適用できない**(売却年の損益通算は可)

要件④は重要です。同族会社売却の場合、本特例の適用可否は個別事案の検討が必要となるため、必ず事前に税理士へ相談してください。

損益通算の対象金額の計算(売却損失額 vs オーバーローン)

損益通算の対象となる金額は、次のいずれか少ない方です。

① 譲渡損失の金額(売却額 − 取得費 − 譲渡費用がマイナスの額)
② オーバーローン額(住宅ローン残高 − 売却額)

本ケースでは住宅ローン残高2,000万円・売却額1,200万円のため、オーバーローン額は800万円。これと譲渡損失額を比較し、少ない方が損益通算の上限となります。

仮に給与所得が500万円であれば、500万円分が当該年で損益通算され、給与所得課税がゼロとなります(合計所得3,000万円以下のため、残額は翌年以降3年繰越も可)。

添付書類|租特法41条の5の計算書

確定申告書には次の書類を添付します。

① 「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書」(租税特別措置法第41条の5用)
② 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
③ 譲渡資産の登記事項証明書
④ 譲渡資産にかかる住宅ローン残高証明書(譲渡契約日の前日のもの)
⑤ 売買契約書のコピー
⑥ 住民票(譲渡資産の所在地で5年以上居住)

繰越控除を翌年以降適用する場合は、各年も継続して確定申告を行い、計算書を添付し続ける必要があります。1年でも申告を怠ると、その年以降の繰越控除は失効します。

まとめ|買換え時の納税負担を最小化するために

本ケースでは、給与所得500万円から譲渡損失500万円を相殺することに成功し、買換えで資金需要の高い時期に所得税・住民税の負担を大きく軽減できました。お客様からは「住宅ローンを抱えたまま売却して諦めかけていたが、控除が使えて本当に助かった」と大変喜んでいただきました。

なお、離婚時の財産分与でみなし譲渡所得が発生するケースでも、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算と関連する論点が出てきます。詳しくは 離婚時の財産分与で発生する「みなし譲渡所得税」 もあわせてご覧ください。

当事務所では、堺市・大阪市を中心にマイホーム売却・買換え時の譲渡所得・損益通算・繰越控除のサポートを多数行っております。同族会社との不動産売買、オーバーローン状態での売却、買換え特例の適用判定など、複雑な事案ほどお気軽にご相談ください。

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