負債分はプラスの財産から差し引いて計算
相続税の対象となる相続財産には、現金や預貯金、不動産などのプラスの財産のほか、借金などのマイナスの財産も含まれます。
マイナスの財産はプラスの財産から差し引くことができ、これを「債務控除」といいます。それでも借金が多い場合は、相続放棄や限定承認という方法を考えましょう。
ほか相続財産には、みなし相続財産と非課税財産があります。
みなし相続財産とは、被相続人が亡くなった後に遺族に支払われる死亡保険金や死亡退職金などのお金のこと。被相続人の固有財産とはいえないものの、実質的には相続財産とみなされているのです。
一方、仏壇や墓地・墓石などは非課税財産です。
このほか、気をつけたいのが贈与財産。相続時精算課税はもちろん、被相続人が亡くなる前3年以内に贈与された財産も相続財産とみなされます。
■ ポイント
● マイナスの財産も相続財産の対象
● 負債分を差し引いて相続する
相続の対象となる財産とは?
■プラスの財産
①金融資産
現金、預貯金、有価証券(公社債、上場株式、投資信託など)
②不動産
家屋(貸家も含む)、宅地(貸家建付地も含む)、農地、山林など
③不動産上の権利
借地権、地上権など
④動産
自動車、家財、貴金属、宝石、骨董品など
⑤その他
ゴルフ会員権、リゾート会員権、特許権、著作権、商標など
■みなし相続財産
①死亡保険金
生命保険金、損害保険金など。相続人に支払われた場合のみ、非課税枠の適用を受けられる。
②死亡退職金
退職金、功労金や、これに準ずる給与などで、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの。非課税枠の適用あり。
③その他
生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利など。
■ 贈与財産
①贈与財産
被相続人が亡くなった日(相続開始日)前3年以内にもらった贈与財産、相続時精算課税制度(※)の適用財産
※相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度。2500万円まで非課税で生前贈与ができるが、贈与者が亡くなった場合は、他の遺産と同様、非課税で贈与した財産にも相続税が課せられる。
■ マイナスの財産
①借金
住宅ローンなどの借入金の残金、未払金など。
②保証債務
保証人、連帯保証人としての地位。
③公租公課
滞納している所得税、住民税、固定資産税、税金など。
④葬式費用
通常の通夜、葬儀社や寺などに支払った葬式費用一式
※香典返し、初七日、四十九日などの法要の費用は除く。
⑤その他
損害賠償債務など。
■ 非課税財産
①日常礼拝をしているもの
生前から所有していた墓地・墓石、仏壇、仏具など。
※純金製の仏壇、骨董品の仏像など高額なものは除く。
②寄付財産
相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定法人に寄付したもの。
③公益事業用の財産
寺社の境内地など、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。
負債を相続する場合の注意点とは?
負債は、相続分に応じて分割されるので、遺産分割の対象外というのが基本です。しかし、遺産分割協議で債務を引き受ける相続人を決めることは可能です。
とはいえ、実際には債務や負債が存在しないということもあります。たとえば住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)に加入していることが多く、その場合は保険金でカバーされます。また(連帯)保証債務は、相続されるものと相続されないものがあります。簡単に説明すると、金銭債権のように内容が確定している保証債務は、相続されます。それから、相続から数年経ってから請求された場合、時効で消滅している可能性も。それだけに負債がある場合は、まずは弊所に相談してください。